探偵日記 【メモ】 (その1)
2003年9月25日日記の更新を止めて、一月半ほど経つのだろうか。
あの話は数年前の話である。
今となっては、過去の記憶の整理と考えてもらっていい。
私は相変わらず、気ままな一人身の生活を送っている。
別に出会いがない訳ではない。
日本で2番目に大きい都市で暮らしているのだから、刺激のある生活も送ろうと思えばできる。
しかし、私の生活は、まるで森の中で一人静かに暮らしている隠者のようだ。
必要最低限の人との接触以外、まったく関わらない。
心穏やかな生活と言えば聞こえはいいが、生きていることを忘れてしまうほど変化に乏しい。
基本的な仕事のやり取りは全てメールやチャットで済ますことが増えていることも原因に関与しているが、『人を避ける』という癖がついたのかもしれない。
やはりあの一件以来、『人の本性』というものの根源が『闇』に包まれていると感じてからかもしれない。
今日は大手広告代理店の営業担当と打ち合わせをする約束があった。
彼は電話やメールでのやり取りでの打ち合わせを好まない。顔を見ながらでないと落ち着かないようだ。私と年は変わらないが前時代的な感覚の持ち主だった。
私の事務所で会いたいということだったので、久しぶり整理と掃除をはじめた。
部屋の真ん中のソファーテーブルには、吸殻で山になった灰皿からゴミがこぼれ、床にはビールの空き缶や、ピーナッツの皮が散乱している。
窓を開け、私はそれらをゴミ袋にほり込みながら、モップで床を研いた。
北向きの窓から乾いた、少し冷えた風が吹き込んだ。
私の心と同様の澱んだ部屋の空気も少し爽やかにものに変わった。
私は窓に身を乗り出し、外の景色を眺めた。
私の居る、この古びたテナントビルからは広告代理店の巨大で威圧的なビルから500mほどの距離がある。
打ち合わせで何回か中には入ったことがあるが、やはり世界に名立たる広告代理店【D通】だ。贅沢なフロアーだった記憶がある。
穏やかな秋空の下、広告代理店の担当者【M田】氏が足早に歩いていた。
予定の時間より10分ほど早い。
私は残りを慌てて片付け、手を洗っていると彼が現れた。
「やあ、今日は無理行って押し掛けて、悪かったね。」
「いえ、かまいませんよ、M田さん」
「いや、実は社内では話せない、内密の相談があるんだ。」
「そうですか、まあ 立ち話もなんですから、座って話しましょう。コーヒーは砂糖1つでしたよね?」
M田氏は挨拶そこそこにテーブルに付いたので、私はコーヒーをカップに注いだ。
「で、 M田さん、内密の話とはなんですか?」
「うん、どこから説明したらいいんだろう。。とりあえず、最初から話したほうがいいのかな。。」
M田氏は、なんとも合点がいかないという顔つきで、私に説明を始めた。
(1264)
あの話は数年前の話である。
今となっては、過去の記憶の整理と考えてもらっていい。
私は相変わらず、気ままな一人身の生活を送っている。
別に出会いがない訳ではない。
日本で2番目に大きい都市で暮らしているのだから、刺激のある生活も送ろうと思えばできる。
しかし、私の生活は、まるで森の中で一人静かに暮らしている隠者のようだ。
必要最低限の人との接触以外、まったく関わらない。
心穏やかな生活と言えば聞こえはいいが、生きていることを忘れてしまうほど変化に乏しい。
基本的な仕事のやり取りは全てメールやチャットで済ますことが増えていることも原因に関与しているが、『人を避ける』という癖がついたのかもしれない。
やはりあの一件以来、『人の本性』というものの根源が『闇』に包まれていると感じてからかもしれない。
今日は大手広告代理店の営業担当と打ち合わせをする約束があった。
彼は電話やメールでのやり取りでの打ち合わせを好まない。顔を見ながらでないと落ち着かないようだ。私と年は変わらないが前時代的な感覚の持ち主だった。
私の事務所で会いたいということだったので、久しぶり整理と掃除をはじめた。
部屋の真ん中のソファーテーブルには、吸殻で山になった灰皿からゴミがこぼれ、床にはビールの空き缶や、ピーナッツの皮が散乱している。
窓を開け、私はそれらをゴミ袋にほり込みながら、モップで床を研いた。
北向きの窓から乾いた、少し冷えた風が吹き込んだ。
私の心と同様の澱んだ部屋の空気も少し爽やかにものに変わった。
私は窓に身を乗り出し、外の景色を眺めた。
私の居る、この古びたテナントビルからは広告代理店の巨大で威圧的なビルから500mほどの距離がある。
打ち合わせで何回か中には入ったことがあるが、やはり世界に名立たる広告代理店【D通】だ。贅沢なフロアーだった記憶がある。
穏やかな秋空の下、広告代理店の担当者【M田】氏が足早に歩いていた。
予定の時間より10分ほど早い。
私は残りを慌てて片付け、手を洗っていると彼が現れた。
「やあ、今日は無理行って押し掛けて、悪かったね。」
「いえ、かまいませんよ、M田さん」
「いや、実は社内では話せない、内密の相談があるんだ。」
「そうですか、まあ 立ち話もなんですから、座って話しましょう。コーヒーは砂糖1つでしたよね?」
M田氏は挨拶そこそこにテーブルに付いたので、私はコーヒーをカップに注いだ。
「で、 M田さん、内密の話とはなんですか?」
「うん、どこから説明したらいいんだろう。。とりあえず、最初から話したほうがいいのかな。。」
M田氏は、なんとも合点がいかないという顔つきで、私に説明を始めた。
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