探偵日記 「喪失」
2003年7月13日リビングには、彼女のすすり泣く声だけが響いていた。
私は立ったまま、自分を失っていた。
ゆきおは笑い転げていた姿のまま、床に座り込んで、項垂れていた。
私たちは、それぞれが別の思枠の中でここ数週間動き、そして破綻した。
これがゆきおが望んだシナリオだったのだろうか。
「ゆきお、お前の望んだ結果か、これが」
ゆきおは押し黙ったまま、のろのろとソファーに戻った。
「お前が気に入らなかったんだよ。社会の落ちこぼれのお前が、自由気ままに生きてんのが!
そのお前の話をすると、嬉しそうにする妻の様子がモット気に入らないんだよ!
サラリーマンとして真面目がんばってる俺より!お前がいいなんて!、、許せるか!」
私はゆきおのコールタールのような憎悪を感じた。彼のエリート意識は今までも感じていたが、それは事実のことだったので、私はそれでいいと思っていた。
そういう態度も気に入らなかったのかもしれない。ゆきおは私にコンプレックスをもってもらいたかったのかもしれない。私にはわからないし、知りたくも無い。
「お前、何がしたいんだ。。俺たちお互いの汚い部分をほじくり出して、それで満足か?」
「この女はな!最初から俺のことなんてどうでも良かったんだよ!エリートだったら誰でも良かったんだよ!子供も家庭もいらなくて!自分さえ良かったらいいだよ!」
「違う!そんなんじゃない!」
私には夫婦の間で起った積み重ねが、今のゆきおの発言になったのかは、わからない。
ただ、ゆきおに相談なく中絶されたことは原因の一つだったのかもしれない。
ゆきおの病的なエリート意識は、夫婦間の中にも優劣を必要としていたのかもしれない。
私にはわからない。
わかりたくもない。
私は、これ以上ここに居たくなかった。
しかし、彼女一人置いていく訳には行かない。
彼らが修復できない関係であることは明らかである。また、このままだと、ゆきおの病的な言葉の暴力で、彼女がおかしくなることは明白だ。
私は彼女を連れ出そうと思った。
しかし、私と彼女の間に大きなシコリがあることも事実であり、それを無視できるような心の余裕はなかった。
私は携帯でタクシーを呼び、彼女にどこか友人宅に行くように勧めた。
タクシーはほどなく到着し、彼女は逃げるように去っていった。
私は呆然としているゆきおを見た。
先ほどの炎のような怒りは治まった。
私はゆきおに、
「帰るよ、じゃあな。」
「待てよ、・・お前らの自由にさせない。。」
私は、ゆきおに振り返ることなく、その場を去った。
私たちは、ゆきおに自分の汚ない部分を見せ付けられ、大人の尊厳を剥ぎ取られた。
もう、お互いに会えることもないだろう。それがゆきおには理解できないのだろうか、いや、ゆきおはわかっていたから、こんなことをしたのか、誰も何も説明してくれないまま、全てが終わったような気がした。
私は立ったまま、自分を失っていた。
ゆきおは笑い転げていた姿のまま、床に座り込んで、項垂れていた。
私たちは、それぞれが別の思枠の中でここ数週間動き、そして破綻した。
これがゆきおが望んだシナリオだったのだろうか。
「ゆきお、お前の望んだ結果か、これが」
ゆきおは押し黙ったまま、のろのろとソファーに戻った。
「お前が気に入らなかったんだよ。社会の落ちこぼれのお前が、自由気ままに生きてんのが!
そのお前の話をすると、嬉しそうにする妻の様子がモット気に入らないんだよ!
サラリーマンとして真面目がんばってる俺より!お前がいいなんて!、、許せるか!」
私はゆきおのコールタールのような憎悪を感じた。彼のエリート意識は今までも感じていたが、それは事実のことだったので、私はそれでいいと思っていた。
そういう態度も気に入らなかったのかもしれない。ゆきおは私にコンプレックスをもってもらいたかったのかもしれない。私にはわからないし、知りたくも無い。
「お前、何がしたいんだ。。俺たちお互いの汚い部分をほじくり出して、それで満足か?」
「この女はな!最初から俺のことなんてどうでも良かったんだよ!エリートだったら誰でも良かったんだよ!子供も家庭もいらなくて!自分さえ良かったらいいだよ!」
「違う!そんなんじゃない!」
私には夫婦の間で起った積み重ねが、今のゆきおの発言になったのかは、わからない。
ただ、ゆきおに相談なく中絶されたことは原因の一つだったのかもしれない。
ゆきおの病的なエリート意識は、夫婦間の中にも優劣を必要としていたのかもしれない。
私にはわからない。
わかりたくもない。
私は、これ以上ここに居たくなかった。
しかし、彼女一人置いていく訳には行かない。
彼らが修復できない関係であることは明らかである。また、このままだと、ゆきおの病的な言葉の暴力で、彼女がおかしくなることは明白だ。
私は彼女を連れ出そうと思った。
しかし、私と彼女の間に大きなシコリがあることも事実であり、それを無視できるような心の余裕はなかった。
私は携帯でタクシーを呼び、彼女にどこか友人宅に行くように勧めた。
タクシーはほどなく到着し、彼女は逃げるように去っていった。
私は呆然としているゆきおを見た。
先ほどの炎のような怒りは治まった。
私はゆきおに、
「帰るよ、じゃあな。」
「待てよ、・・お前らの自由にさせない。。」
私は、ゆきおに振り返ることなく、その場を去った。
私たちは、ゆきおに自分の汚ない部分を見せ付けられ、大人の尊厳を剥ぎ取られた。
もう、お互いに会えることもないだろう。それがゆきおには理解できないのだろうか、いや、ゆきおはわかっていたから、こんなことをしたのか、誰も何も説明してくれないまま、全てが終わったような気がした。
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