探偵日記 「記憶」

2003年5月26日
私がゆりこと親しく話したのは、友人の結婚式の2次会であった。

ゆきおとゆりこは夫婦で出席し、その際に彼女を紹介された。
初対面の印象は色の白い大人しい女性でしかなかった。ワインで少し赤みがかった顔で品良くゆきおに微笑んでいた記憶がある。
ゆりこは薄化粧で肌が美しいこともあり、20代前半に見えなくもなかったが、既に30前ぐらいだった。
私たちのテーブルに二十歳ぐらいの長髪の今風の若者がやってきて、それとなくゆりこを口説きはじめた。私とゆきおは十も年の離れた若者に口説かれて、赤い顔をして困っているゆりこを二人でからかい半分で見物し、また笑いをかみ殺していた。
しばらくして、私から助け舟をだした。「ご主人の前で人妻を口説くなんて、なかなかいい度胸だ」と注意すると驚いたように去っていった。
ゆりこはいつまでも助けに来ないゆきおに少し怒ったように拗ねてみせていた。
ゆきおと私は顔を見合わせて大笑いし、ゆりこも笑った。
その日、私たちは大いに飲み明かした。


あれから数年経った。

今では、お互いに相手を疑い、恐れ、絶望する関係になってしまった。

人はお互いにいいところだけを見て生きていけないのだろうか。

明日、私はゆきおと会わなくてはいけない約束があった。

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